浜松の子育て支援レポート

言葉の発達を個々にサポート「幼児ことばの教室」

2015年7月27日

幼児ことばの教室

小さな子どもを持つ親にとって、我が子の体や心の成長と同様に、言葉の発達というのはとても気になりますよね。「うちの子、私の言っていることが理解でき ているのかな?」「もう幼稚園に入ったのに、他の子と同じように発音できない…」など、不安を抱いているパパ・ママにぜひ知ってほしいのが、浜松市による 「幼児ことばの教室」です。
ただ、名前は耳にしたことがあっても、どんな所かよく分からず、通うことをためらうパパ・ママも多いでしょう。
そこで今回、神久呂小学校「幼児ことばの教室」を取材し、どんな所か見学させてもらいました。

「幼児ことばの教室」の役割                      

「幼児ことばの教室」とは、言葉の遅れや発音の誤りがあったり、なめらかに話せなかったりする年少から年長の児童が通うための教室です。浜松市の発達支援教育の一環として、現在市内10校に2教室ずつ設置されており、194名(2015年5月1日現在)の子が通っています。取材した神久呂小学校には49名が通っているそうです。

言葉の成長は子どもそれぞれの体の発達や環境などによって全く違ってくるため、教室では先生とマンツーマン(1対1)で指導を受けます。通級は週1回が基本で、時間は1人45分間です。授業料は無料です。

以下のような例に当てはまる所がある子が対象になります。

言葉が遅い(言いたいけどうまく言葉に表せない)

  • 言葉の数が少ない
  • 言葉がつながらない
  • 言葉の理解が難しく、指示がわからない

正しく発音できない

  • さかな(魚)→タカナ
  • えんぴつ(鉛筆)→えんぴちゅ

なめからに話せない

  • 「ボ、ボ、ボ、ボク、きょうね」(最初の言葉を繰り返す)
  • 「ボーーーク、あのね」(最初の言葉を伸ばす)
  • 「…ジュース飲みたい」(最初の言葉がなかなか出てこない)

神久呂小学校「幼児ことばの教室」の様子                

取材当日、指導を受けていた年中のA君(仮名)の場合は、発音がはっきりせず、お母さんでも聞き取れない言葉がありました。A君からすると、一生懸命話しているのに何で分かってくれないの?と思ってしまい、親子ともにストレスを感じていました。そこで、お母さんは思いきって幼稚園の先生を通じて「幼児ことばの教室」に紹介してもらい、年少の秋から通級を始めました。
通級のきっかけとしては、やはり一番身近な保護者が気になったため通い始めることが多いようですが、幼稚園の先生からの勧めや保健師さんに相談したことがきっかけで通うようになった子もいます。

言葉だけでなく、子どもの心と体の成長も育む

幼児ことばの教室

この日の内容は、カードを見て名前を答えた後、仲間分けして並べ、「これは何の仲間?」「どうぶつ」「じゃあ、こっちは?」「くだもの」というように手を動かしながら、先生とクイズのように会話をしていきました。また、洗濯バサミをカゴにくっつける競争や、大きなサイコロを使ったすごろくゲームなど、とても楽しそうな内容です。ゲームの間には、歌や手遊びも挟んでいました。その間、お母さんはすぐ隣の部屋からマジックミラー越しに様子を見守っています。
先生とA君の笑い声が絶えない中、30分ほどが経過すると、「じゃあ、プレイルームに行こう」と先生が声をかけます。A君はまだゲームをしたそうでしたが、「はーい」と返事をして、移動しました。実は、教室の隣にはたくさんの遊具や玩具が揃ったプレイルームがあり、残り15分は、好きなように遊んで過ごすことができます。

幼児ことばの教室

これは、「言葉と心と体は一体なので、体を動かすことが言葉や心の発育を促す」という考え方によるものです。また、子どもへのご褒美という意味あいもあるそうです。
そして、プレイルームで子どもが遊んでいる姿を見守りながら、先生から指導中の様子について報告があり、保護者からの相談を受けます。つまり45分間のうち、およそ30分が子どもへの指導、残り15分は保護者のための時間にもなっているのです。
指導内容は、その子の困り感によって違ってきます。発音で困っている子には発音の指導を、言葉が詰まっている子にはそれに応じた指導を行います。その子のためだけに、その子にあった内容を組み立てていくので、まったく同じ内容の指導はないのだそうです。

専門知識と経験を活かした先生たちの指導

先生たちは全員何らかの教員免許を持ち、たくさんの研修や勉強を経て、専門の知識を身につけた浜松市の職員です。「幼児ことばの教室」は指定校に2教室ずつ設けられており、2人の先生がいます。先生同士で週1回ミーティングを行い、より良い指導方法についてお互い意見を出し合い、情報交換をすることで、常に指導力の向上に努めています。また、月に1回程度市内10校の先生が集まる機会を設け、教材についての情報交換や担当している子どもたちへの対応を話し合っています。

神久呂小学校には水谷華苗先生と田林麻里子先生のお二人がいます。
お二人が「幼児ことばの教室」の先生になった大きな理由は、自分自身の子育て経験にありました。

同じ悩みを持つお母さんたちの力になりたい~水谷先生の場合~

水谷先生

水谷先生には3人の子どもがいますが、末の娘さんに知的障がいがあることが分かり、学校の教師を退職することにしました。ちょうどその頃、「ことばの教室」の先生になりませんか、という話があり、指導者への道を歩み始めました。子育てにすごく悩んだ自分だからこそ、同じ悩みを持つお母さんたちの気持ちに寄り添い、役に立ちたいという強い決意が根底にありました。
また、個別対応なので、指導する子の発達ペースに合った教材を選び、授業内容を考え、 一人一人にきめ細やかな対応をしながら、子どもの成長を見ることができるという点で、担当者としてのやりがいを感じました。その思いは、指導歴7年目を迎えてますます強まっているようです。

お母さんたちの手助けをしたい~田林先生の場合~

田林先生

田林麻里子先生には、息子さんが「ことばの教室」に通った経験がありました。息子さんが教室に通うことで、どんどん上手に話ができるようになり、自分に自信を持って行動するようになる姿を身近で見てきました。この経験から、今度は自分が他のお母さんたちの手助けをしたいと思い、日々全力で指導に取り組んで います。

子どもはほめて、ほめて、ほめて伸ばす!が授業の基本

二人の先生方に「指導をする上で、一番大切なことは?」と質問すると、明確に3つのポイントを挙げてくれました。

  1. 子どもはほめて、ほめて、ほめて伸ばす!
  2. 授業の中で必ず、「できた!」と感じてもらう機会を作り、その積み重ねで子どもに自信をつけること。
  3. とにかく子どもが楽しく来られる教室にすること。「先生、また来るね!」と笑顔で通えるような教室を目指しています。

先生たちは、単に言葉を教えるのではなく、心と体と言葉が一体となって成長していけるよう、様々な努力や工夫をして、子どもたちと向き合っているのです。

教室に通うことで子どもに自信が芽生えた~保護者の声~

幼児ことばの教室

息子は週1回の授業をとても楽しみにしています。ここでは、とにかく先生がほめて、ほめていいところを伸ばしてくれるので、子どもが自信を持てるようになりました。
発音はもちろん、言葉の数が増えてきたので、自分の言っていることが相手に伝わらないというイライラが少なくなったようです。逆に言いたいことをしっかり伝えられるので、自分もすっきりするみたいです。
子どものストレスが減った分、親のストレスも少なくなりました(笑)。
私自身、子どもの言葉の問題だけでなく、日頃の心配事や悩みを相談すると、先生から的確なアドバイスをもらえるので、ここに来ることが本当に楽しみです。通級を始めたおかげで、心配事を減らすことができているので、とてもありがたいです。

一人で悩みを抱え込まず、まず相談を!

「ことばの教室」では、保護者が悩んでいる問題に寄り添い、一緒に考え、対応してくれます。
水谷先生のお話で『自分自身、子育てですごく悩んだ時期がありますが、一人で悩むのはとても辛いことです』という印象的な言葉がありました。
保護者が誰かに相談することにより、楽になった気持ちで子どもと接してあげられることが、実は一番大事なことではないでしょうか。
言葉の発達以外にも、育てにくいなど、何か子育ての悩みや心配事がある場合は、「ことばの教室」でもいいし、保健センターや幼稚園の先生など、まずは身近な所で相談してみることが大事です。
「ことばの教室」の指導は平日に行われていますが、保護者の仕事の都合などで週1回の通級が難しい場合は、月1回にするなど柔軟な対応をしてくれます。言葉の発達の問題は個人によって違いますし、家庭の事情などもさまざまでしょう。「仕事を休んで毎週通うのは大変…」と思われた方も、まずは先生に相談してみてください。子どもの言葉の発達のために、指導方法から通級回数まで、個別に最善の方法を考えてもらえます。

「幼児ことばの教室」については、お住まいの地域の指定校または浜松市教育委員会にお問い合わせください。

取材を終えて

“先生とマンツーマンで言葉の指導を受ける教室”と聞くと、少し堅苦しいイメージでしたが、実際はイメージと正反対でした。見学の30分が、あっと いう間に感じるほど楽しい指導が行われていました。通級している子たちは「毎日言葉の教室に行きたい!」と言い出すとのことで、それだけ子どもにとっては 心から楽しい時間なのだということが、よく分かりました。また保護者にとっては、先生と話す時間が必ず設けられていることで、日々の心の負担を軽くすることができる貴重な時間となっているようです。
日々のコミュニケーションに欠かせない言葉について、悩みを抱える親子にとって「幼児ことばの教室」はかけがえのない、大切な場所だということが実感できました。

取材・文責/NPO法人はままつ子育てネットワークぴっぴ 河西幸枝