クローズアップ「ひと」

有働眞澄 さん おたのしみ劇団ぱんだ代表

2013年10月24日

空だって飛べる!不可能が無いのが人形劇 子どもたちに精一杯、いい舞台を届けたい

有働眞澄さん 

小さな舞台の小さな人形に、目も心も釘づけ。ママの膝から立ち上がって、人形の動きを目で追う子どもたち。
子どもを夢中にさせ、大人にも癒しをもたらす、人形劇の世界へようこそ――。
複数の人形劇団を主宰しながら、浜松市人形劇協会副会長として、子どもと文化芸術にかかわる人々のネットワークづくりに力を尽くす有働眞澄さん。思わず惹きつけられる、やさしい声と笑顔。ですが、その想いの深さには圧倒されます。

 

始まりは、お母さんたちによる手作りの人形劇

人形劇

生まれも育ちの浜松の有働さん。幼稚園教諭の仕事をしていましたが、二人目の子どもの出産を機に一旦退職。四人の子どもの子育てに専念していた頃、幼稚園 PTAとして「子どものために何かやってあげられないかしら?」と、お母さんたち同士で人形劇をやってみたのが、ことのはじまりでした。

人形も舞台も全て手作りの短い劇でしたが、劇が終わってから顔を出すと「○○ちゃんのママがやってたんだ!」と、子どもたちは大喜び。お母さんたち自身 も、「自分にこんなことができるなんて思ってもみなかった」と感動を味わいました。これを機に、平成6年に人形劇サークル「かみふうせん」を立ち上げるこ とになりました。「かみふうせん」では、幼稚園・保育園や小学校の他、浜松市芸術祭などの催しに参加して数多くの公演を行ってきました。
「子どもたちを喜 ばせるために何かやりたい!」というお母さんたちと皆で人形劇を作り上げるのは、有働さんにとって何よりの喜びでした。

親子がふれあう大切な時間のために

お楽しみ劇団ぱんだ

その後、再び転機が訪れます。浜松市の“育児サークル派遣講師養成講座”に参加したことから、同期の受講メンバーと共に、「お楽しみ劇団ぱんだ」を結成。
平成22年から浜松市地域力向上事業「はじめての人形劇」として、乳幼児を対象とした人形劇とワークショップを開催するなど、新たなチャレンジが始まりました。

「人形劇を見るなんて、0歳の子じゃ無理!という思い込みがあるかもしれないけれど、ママのおひざでなら、ちゃんと見られるんですよ。初めはやさしい内容 の、短い劇でいいんです。『うちの子、ちゃんと見てました!』『楽しそうにしていて、よかった!』って、お母さんたちも子どもの成長を感じて嬉しそうです」
 

お楽しみ劇団ぱんだ

「はじめての人形劇」では、観劇の後自分で簡単な人形を作ってみるワークショップをします。お母さんと一緒に人形を作る子どもたちの、真剣な目つき と手つき。それ以上に、お母さんたち自身もいつしか人形作りに没頭しています。日頃の子育ての疲れや悩みから解き放たれ、心と頭がほぐされるひと時です。

「お母さんたちにも気分転換してほしいんです。子どもが泣いたから、騒いだからといって自分を責めてばかりだと子育ては大変。それよりも、子どもと一緒に楽しんでみて。お母さんたちも、自分自身を育てていいんです」
 

子どもたちに本物の感動を味わってほしい

人形劇の魅力

人形劇の魅力は“不可能が無い”こと、と有働さんは言います。
「人形遣いは、生身の役者には難しいことも演じられます。ウサギにも魔女にもなれるし、空だって飛べちゃう。人形に命を吹き込んで、子どもに楽しみを届けられる。子どもたちが目を輝かせて見てくれるのが、何より嬉しいことです」
いつもは遊びといえば携帯ゲームばかり…という小学生の男の子も、人形劇が始まると顔つきが変わり、最後は笑顔になって帰っていく――。生の人形劇が持つそんな力を、演じるたびに実感しています。
 

お楽しみ劇団ぱんだ

これまでの有働さんの道のりは順風満帆なように見えますが、その裏には、たゆまぬ努力がありました。
「幼稚園教諭の経験から、子どもに伝わるような発声などの基本は身についていましたが、人形劇については最初、全くの素人でした。でも、活動を通して知り 合ったプロ人形劇団の方たちが、私たちの舞台を見に足を運んでくださって、演出について『ここはこうしたほうがいいよ』などと惜しみなくアドバイスをくだ さり、育ててくださったんです。おかげで実力以上の仕事をさせていただいていると思っています」 謙遜する有働さんですが、より高いクオリティを目指して学ぶ姿勢が伝わり、周りの人々を動かしたのでしょう。

 

お楽しみ劇団ぱんだ

舞台で使われる手作りの人形や小道具、舞台装置などを間近に見ると、その丁寧なつくりに驚かずにいられません。
「手を抜かないようにしているんです。子どもたちには、いいものを見てもらいたいですから。小さい時にいいものを見て育てば、大人になってからも文化や芸術を大切に思ってくれるかな、と、願いを込めています」
道具も演出もメンバー同士で互いに見せ合いながら改善を加え、工夫しています。 わずか数分の短い人形劇の準備に、これほどのエネルギーが注がれているからこそ、見る人の心をつかむ舞台となるのでしょう。

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これまでの有働さんの道のりは順風満帆なように見えますが、その裏には、たゆまぬ努力がありました。
「幼稚園教諭の経験から、子どもに伝わるような発声などの基本は身についていましたが、人形劇については最初、全くの素人でした。でも、活動を通して知り合ったプロ人形劇団の方たちが、私たちの舞台を見に足を運んでくださって、演出について『ここはこうしたほうがいいよ』などと惜しみなくアドバイスをくださり、育ててくださったんです。おかげで実力以上の仕事をさせていただいていると思っています」 謙遜する有働さんですが、より高いクオリティを目指して学ぶ姿勢が伝わり、周りの人々を動かしたのでしょう。

舞台で使われる手作りの人形や小道具、舞台装置などを間近に見ると、その丁寧なつくりに驚かずにいられません。
「手を抜かないようにしているんです。子どもたちには、いいものを見てもらいたいですから。小さい時にいいものを見て育てば、大人になってからも文化や芸術を大切に思ってくれるかな、と、願いを込めています」
道具も演出もメンバー同士で互いに見せ合いながら改善を加え、工夫しています。 わずか数分の短い人形劇の準備に、これほどのエネルギーが注がれているからこそ、見る人の心をつかむ舞台となるのでしょう。

感性を育てるために、できることを力を合わせて

有働眞澄さん

浜松には「おたのしみ劇団ぱんだ」の他にも、いくつものアマチュア人形劇団があり、それぞれ個性的な活動をしています。例年開催される「浜松劇突(はまま つ演劇・人形劇フェスティバル)」(浜松市文化振興財団主催)は、演劇と人形劇合同で幅広い年代の人を対象として行う、全国でも類を見ないフェスティバ ル。この中で、浜松のアマチュア人形劇7劇団が合同で行う「人形劇自主公演」は、誰でも無料でたくさんの人形劇を見ることができる嬉しい一日です。

「浜松というところは、アマチュア劇団同士に横のつながりがあって、仲良く力を合わせて頑張っています。これは他のまちでは無いことだね、っていろんな方 から言われます。ただ、どこの人形劇団でもそうなんですが、若い世代の担い手がなかなか育ってこないことが課題です。これからは、次世代の育成にも力を入 れていきたいですね」
最後の言葉の後に、私の体が動くうちはね、と付け加えて笑う有働さんですが、それが全くの冗談にしか聞こえないほどの若々しさ。人形劇活動が、いきいきとしたパワーの源となっているからでしょうか。
その秘密を知りたい方は、ぜひ人形劇の世界の扉を開けてみませんか?

◆有働 眞澄(うどう ますみ)さん 略歴◆

人形劇サークル「かみふうせん」、アマチュア人形劇団「おたのしみ劇団ぱんだ」代表。浜松市人形劇協会副代表として地域の文化振興に寄与するため精力的に活動するいっぽう、現在は幼稚園教諭にも復帰。多忙な毎日を送る。

  • 浜松学院大学付属幼稚園 非常勤講師
  • 浜松市人形劇協会 副会長
  • NPO人形劇プロジェクト稲むらの火 理事
  • 人形劇サークルかみふうせん 代表
  • おたのしみ劇団ぱんだ 代表

(2013年10月24日にインタビュー 談:有働眞澄さん 人形劇舞台写真提供:浜松写真連絡協議会 取材・文 ぴっぴ 寺内美登里)