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「海と共にあるまち」への誇りと戸惑い

東日本大震災から5年 今伝えたいこと<2>

浦野 愛さん
(認定NPO法人レスキューストックヤード常務理事)

ぴっぴ:現在でも支援している地域がありますか?あれば、現在はどんな支援をされているのでしょうか?

浦野さん:宮城県七ヶ浜町の住民交流スペース「きずなハウス」の運営、移動学習・交流車両「きずな号」の運行、公営住宅移転者宅の個別訪問、公営住宅集会場スペースでの集いの場作り、七ヶ浜のいいところを再発見し未来の子どもたちに残す「はまのわ」活動、名古屋からのボランティアバス派遣、きずな工房の運営サポートなどを行っています。

ぴっぴ:2011年当時、足湯などで被災者の心を癒す支援などもされてきましたが、被災時に当事者に必要だったのはまず何だったのでしょうか?

浦野さん:最低限の健康が維持できる、寝床・食事・トイレ・衛生・入浴などの物理的な環境と、役割や人との繋がりが途切れない日中活動の場。そして、日々の不安や疑問、喜びや怒りを吐き出せる場所と、一緒に関わろうとしてくれる人の存在が必要でした。

足湯ボランティアの様子

ぴっぴ:現在、被災地の子どものいる家庭などで、問題・課題と思っているところがあれば教えてください。

浦野さん:七ヶ浜では、「海の復興が町の復興に直結する」と町長が言うほど、海と共に暮らしが形成されている町ですが、震災以降、親が怖がって子どもを海に近づかせない状況があります。また、子どもの成長と共に仮設住宅が手狭になり、友達やプライベートな空間を確保できず、親もイライラが募り、大声で怒鳴ったりと、家族間がギクシャクする時期がありました。ただ、現在は高台・公営住宅への移転が進んでいるため、少しずつ解消はしています。

ぴっぴ:東日本大震災の5年間をかえり見て、変わったことがあれば教えてください(要支援者、特に子どものいる家庭について)。

浦野さん:公営住宅は年金暮らしの低所得者層が多く、6割~7割が65歳以上の高齢者。鉄の扉、モニター式インターホン、ボタン一つで風呂を沸かすなど、システム化されるのはよいが、使いこなせず、訪問者が来ても操作が分からず留守と思われた、お湯が沸かせず水のシャワーで過ごしたなどの問題も起こっています。

仮設にいる時ほど、人の声や気配を感じず、遠慮して家の行き来がしづらくなったとの声もあり、孤立感や寂しさを訴える人もいます。また、壁に穴を空けてはいけないという行政からの注意により、神棚や手すりの設置を躊躇し、住みやすい生活環境を整えることができない状況もありました(後日取り付けの許可が出た)。

子どもは津波の恐ろしさを体験しながらも、「七ヶ浜は新鮮な魚、のり、海が自慢」と誇りに思う気持ちも強くあり、漁師との交流やかつての七ヶ浜を回顧する写真展には、多くの子どもたちが足を運んでくれています。親も子ども達に感化されて、浜の人々と関わる接点も増えてきました。

とはいえ、借金を重ねての再出発であるため、ローン返済、学費などで親は大きなプレッシャーを抱えています。また、子どものいない世帯などは、銀行からの借り入れが難航しており、高台での再建に時間がかかっています。

浦野 愛さん(特定非営利活動法人レスキューストックヤード常務理事)

浦野愛さん

阪神淡路大震災当時、学生で被災者支援にあたる。卒業後、特別養護老人ホームに勤務後、レスキューストックヤード設立時から関わる。社会福祉士。

※本文中の写真提供:認定NPO法人レスキューストックヤード

ぴっぴから

静岡県は東海大地震が来ると言われ、数十年前から防災訓練など熱心に行われてきています。ぴっぴも2006年、法人設立当初から「子どもの防災を考える地域のネットワーク事業」で子どもを守る防災ワークショップをこれまでに8,000人の人々に行ってきました。 ワークショップでは、いざというときに知恵を働かせて身近なものを使って身を守ることや、地域でいざというときに助け合える関係を作っておくために、日頃からのネットワークの構築がいざという時に大きく役立つことなどを伝えてきました。

防災関連ではぐっと大先輩の認定NPO法人レスキューストックヤードの活動は「寄り添う」「日常から学びあう」「最後のひとりにこだわる」「ひろげる」。どれも、ぴっぴが目指すところですが、すごいことにこれまで40ケ所もの被災地に出かけて支援されています。足湯を通して、被災した人々のふとしたつぶやきをしっかり受け止め、寄り添う。この度はこうした地道な活動をも続けてこられている途上からの声をいただきました。

七ヶ浜は海とは縁が切れない町なのですね。親心としては、怖い体験をしただけに子どもを海に近付けたくないという気持ちはわかり、複雑な気持ちが交差してしまうのは当然かもしれません。けれど、「七ヶ浜は新鮮な魚、のり、海が自慢」と地元を誇りに思う子どもたちに感化されて、海に関わる人々との交流も増えている様子。こうしたことから、海の豊富な幸が受益をもたらし、バラバラになったコミュニティを再編してくれる手掛かりにはならないでしょうか。            

<hiro>

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