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児童虐待について/児童虐待 こどもを健やかに育むために

浜松成育医療学講座通信

目次

はじめに

2023(令和5)年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数は225,509件と過去最高を記録し、右肩上がりの増加傾向が続いています。浜松市においては、児童相談所が開設された2007(平成19)年度の児童虐待通告件数は191件でしたが、2022(令和4)年度には872件と過去最高の件数を記録しました。翌2023年度は761件と約110件減少しましたが、それでも2007年度に比べて約4倍の件数となっています。
児童虐待は、1990(平成2)年頃に社会問題としてマスコミに取り上げられるようになって社会的な認知が進み、さらに2004(平成16)年の児童虐待防止法の改正において、夫婦喧嘩やDVの目撃が心理的虐待に当たることが明確化されたことに伴い、警察署からの心理的虐待による通告が増えて児童虐待全体の件数増加に拍車が掛かりました。

私たちは、児童虐待がこどもの心身の健やかな成長と人格の形成に重大な影響を与えるとともに、こどもに対する重大な人権侵害に当たるという認識のもと、事態が深刻化する前の早期発見、早期対応に努めています。

学校での人権教育などの啓発活動やSNSの広がりによって、こども自身の児童虐待に関する認知は進んできていますが、こどもからSOSを発信することができない場合には、こどもの近くにいる学校や保護者の皆さんの気づきが虐待の早期発見へとつながります。虐待が疑われるサインに気づいた際には、市のこども家庭センターや児童相談所への相談・通告をお願いします。

1.こどもたちや保護者に見られる虐待のサイン

こどもと接している中で、次のような気づき(違和感)を感じたときは、こどもが置かれている環境に何らかの変化があり、虐待が起きている可能性も考えられます。

こどもと接している中での気づき(違和感)

こどもの様子が今までと大きく違う。
「あれ、どうしたのだろう」と思った。

こどもが虐待かなと思うようなことを言った。
「まさか、でも」と思った。

虐待を受けているこどもだけでなく、虐待をしている保護者にも特徴的な状況(サイン)が現れます。具体的には、次に挙げるような状況が、1つだけでなく複数の項目に該当したり、頻繁に見られたりする場合には虐待が疑われます。もしも児童虐待ではないかと感じたら、迷わずお電話ください。(連絡先は「7.児童虐待の相談機関について」を参照)

こどもに見られるサイン

  • いつもこどもの泣き叫ぶ声がする。
  • 説明できない不自然なアザや火傷のあとがある。
  • 服やからだがいつも汚れている。
  • 急にやせた。拒食、過食、むさぼるように食べるなどの異常な食行動がある。
  • 乱暴な言葉づかい、極端な無口、表情が乏しい。
  • 家に帰りたがらない。
  • 夜遅くまでひとりで遊んでいる。
  • 親がいなくなると急に表情が晴れやかになる。親の顔色を伺う態度。
  • 年齢や場所に不釣り合いな性的な言動 など

保護者に見られるサイン

  • 家の中が散らかっていて、不衛生である。
  • 近所との交流がなく孤立している。
  • こどもの健康や安全を考えていない。
  • こどもを置いて外出している。
  • 人前でこどもを厳しく叱る、叩く。
  • こどもの養育に関して拒否的、無関心である。
  • こどものけがについて不自然な説明をする。 など

2.児童虐待とは

児童虐待は、保護者が、その監護する児童(18歳未満)について行う次の4つに分類した行為をいいます。

身体的虐待

  • 打撲傷、あざ、骨折、頭蓋内出血などの頭部外傷、内臓損傷、刺傷、たばこなどによる火傷などの外傷を生じるような行為。
  • 首を絞める、殴る、蹴る、叩く、激しく揺さぶる、熱湯をかける、布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、異物をのませる、食事を与えない、戸外にしめ出す、一室に拘束するなどの行為。
  • 意図的にこどもを病気にさせる。 など

性的虐待

  • こどもへの性交、性的暴行、性的行為の強要・教唆など。
  • こどもの性器を触る又はこどもに性器を触らせる。
  • こどもに性器や性交を見せる。
  • こどもをポルノの被写体などにする。 など

ネグレクト

  • こどもにとって必要な情緒的欲求に応えていない(愛情遮断など) 
  • 食事、衣服、住居などが極端に不適切で健康状態を損なうほどの無関心・怠慢 など
    例えば,
    1) 適切な食事を与えない
    2) 下着など長期間ひどく不潔なままにする
    3) 極端に不潔な環境の中で生活をさせる など。
  • こどもを遺棄したり、置き去りにする。
  • 祖父母、きょうだい、保護者の恋人などの同居人や自宅に出入りする    
  • 第三者が身体的、性的、心理的虐待を行っているにもかかわらず、それを放置する。 など

心理的虐待

  • ことばによる脅かし、脅迫など。
  • こどもを無視したり、拒否的な態度を示すことなど。
  • こどもの心を傷つけることを繰り返し言う。
  • こどもの自尊心を傷つけるような言動など。
  • 他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする。
  • 配偶者やその他の家族などに対する暴力や暴言。
  • こどものきょうだいに、虐待を行う。 

3.こどもの権利について

こどもを一個人として尊重されるべき人格と見るのか、あるいは親や家族や国家による指導と育成の対象と見るのか、大人社会のこども観の違いによって、こどもの虐待問題への対応は異なってきます。

日本は、1994年に国際条約である「こどもの権利に関する条約」に批准しました。

この条約では、18歳未満のこどもを権利を持つ主体と位置づけ、大人と同様に一人の人間としての人権を認めています。また、次に示した4つの原則の他に、遊ぶ、学ぶ、休むといった、普段何気なく日常生活を送っていると気づかないことも、こどもの権利として保障されています。

「こどもの権利条約」4つの原則

  • 生命、生存および発達に対する権利(命を守られ成長できること)
    すべてのこどもの命が守られ、持って生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障される。
  • こどもの意見の尊重(意見を表明し考慮されること)
    こどもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、大人はその意見をこどもの発達に応じて十分に考慮する。
  • こどもの最善の利益(こどもにとって最も良いこと)
    こどもに関することが決められ、行われる時は、「そのこどもにとって最も良いことは何であるか」を第一に考える。
  • 差別の禁止(差別のないこと)
    すべてのこどもは、こども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などいかなる理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障される。

2016(平成28)年の改正児童福祉法では、「こどもが権利の主体であること(誰かのためにではなく自分のために生きることができること)」が明記されました。この理念は、児童虐待問題への取組みの土台となるものです。

児童虐待の定義は、時代と共に改正が加えられることも考えられます。目の前で起きていることを児童虐待ではないかと疑う(判断する)上で大事なことは、こどもが権利の主体であることを前提として、何がこどもの権利を侵害することに当たるのかを意識することだと思います。

ミニコラム

今回の浜松成育医療学講座通信では「児童虐待」をテーマにしております。

おとなが、こどものSOSにいち早く気づくことはとても重要なことですが、同時にこどもたちがひとりで悩まないように自ら相談できる窓口があることを知っておくことも重要です。下記はこどもたちが電話で相談できる窓口です。是非ご活用いただければと思います。

浜松医科大学 浜松成育医療学講座
犬塚祐介

ミニコラム

4.児童虐待に至る背景

夫婦関係の不和や経済的な問題、社会からの孤立、地域のつながりの希薄化など、さまざまな要因が児童虐待へとつながるとされています。
ここでは、保護者、こども、養育環境などに見られるリスク要因を紹介します。

保護者側のリスク要因

  • 望まない妊娠
  • 若年妊娠
  • マタニティブルーズや産後うつなどの精神的な問題
  • こどもへの愛着形成が不十分(妊娠中に早産等の問題、こどもの長期入院など)
  • 精神障害・発達障害・知的障害・アルコール依存・薬物など
  • 保護者の被虐待経験(世代間連鎖)など

こども側のリスク要因

  • 乳幼児期のこども
  • 未熟児
  • 障害児(身体障害、知的障害、発達障害)
  • 多胎児
  • 愛着に課題があるこども
  • 保護者にとって何らかの育てにくさがあるこども など

養育環境のリスク要因

  • 経済的に不安定
  • 未婚を含むひとり親家庭
  • 親族や地域社会から孤立
  • 内縁者や同居人がいる
  • 子連れ再婚家族(ステップファミリー)
  • 保護者の不安定な就労や転職の繰り返し
  • 転居を繰り返す
  • 夫婦不和、配偶者からの暴力(DV)等不安定な状況 など

その他のリスク要因

  • 妊娠届が遅い
  • 母子手帳未交付
  • 妊婦健診未受診
  • 乳幼児健康診査未受診
  • 飛び込み出産
  • 医師や助産師の立ち合いがない自宅等での分娩
  • きょうだいへの虐待歴
  • 関係機関からの支援の拒否 など

5.児童相談所の役割

児童相談所は、児童福祉法に基づき都道府県及び政令市、中核市及び東京特別区に設置される行政機関で、全国に240ヵ所設置(2025年4月時点)されています。

原則0〜17歳までのこどもに関する相談や通告を受け、適切な支援につなげることで「こどもの権利を守る」ことを目的としています。

児童相談所では、専門の職員がチームを組んで、問題の解決にあたります。

  • 児童福祉司(ケースワーカー)
    面接や家庭訪問などにより、こどもや家庭の状況を調査し、助言や援助を行います。
  • 児童心理司
    臨床心理士や公認心理師の資格を持った職員が、こどもの発達や性格、適正などについて心理的な検査や心理療法、カウンセリングなどを行います。
  • 医師
    必要に応じて診察をしたり、助言などを行います。

児童相談所には、児童虐待の通告を受けたときにこどもの安全を確認する義務があります。そのため、原則として、通告を受けた後は速やかにこどもに会って、こどもの安全・安心が守られていることを確認します。状況によっては、警察と連携することもあります。

その後、こどもや保護者などの当事者から可能な限り丁寧に、経緯や事情、思いなどを聴き取り、学校、医療機関等の関係機関からの情報も参考にしながら虐待に至ったメカニズムの理解に努め、こどもや保護者とともに再発防止や支援の方法を考えます。

また、こどもにとって一時保護や施設入所などの支援が必要と判断される場合には、児童相談所の職員がこどもの意見・意向を丁寧に聴き取り、その意見・意向を勘案して支援方法を決定していきます。

なお、児童虐待への対応は、児童相談所だけで解決できるものではなく、こどもや家庭を支援する様々な機関(こども家庭センター、学校、医療機関、母子保健、障害福祉、警察、民生委員児童委員など)と協力して支援のネットワーク(チーム)をつくり、それぞれの機関ができる役割を担って支援を行っていくことが必要となります。

6.こどもを健やかに育むため~愛の鞭(ムチ)ゼロ作戦~

子育てをしていると、こどもが言うことを聞いてくれなくて、イライラすることがあります。つい、叩いたり、怒鳴ったりしたくなることもありますよね。

一見、体罰や暴言には効果があるように見えますが、恐怖心を与えてこどもをコントロールしているだけで、こどもは、なぜ叱られたのか理解できていないこともあります。

最初は、「愛の鞭」のつもりでも、いつの間にか、「虐待」へとエスカレートしてしまうこともあります。そうならないために、次のポイントを心掛けながら、こどもに向き合いましょう。

ポイント1 子育てに体罰や暴言を使わないと心に決める

一見、体罰や暴言には効果があるように見えますが、叩くことによって得られたこどもの姿は、叩かれた恐怖によって行動した姿。自分で考え行動した姿ではありません。

「愛の鞭である」と親が思っても、こどもにとって大人から叩かれることはとても怖いことです。ちょっと叩かれただけ、怒鳴られただけでも、心に大きなダメージを受けることもあります。

こどもだからといって、暴力や暴言が許されるわけではありません。それに体罰や暴言は「虐待」へとエスカレートする可能性もあります。「叩かない 怒鳴らない」と心に決めましょう。

ポイント2 こどもが親に恐怖心を持つとSOSを伝えられなく なることを知っておく

親に恐怖心を持ったこどもはどのような行動を起こすでしょうか。親に気に入られるように、親の顔色を見て行動するようになります。

また、恐怖を持つ親に対しては、こどもが心配ごとを打ち明けられなくなります。心配ごとを相談できないと、いじめや非行など、より大きな問題に発展してしまう可能性もあります。

ポイント3 爆発寸前のイライラをクールダウンする

こどもが言うことを聞いてくれないときに、イライラすることは誰でもあること。でも、疲れていたりして、もともと抱えているストレス度が大きいと、こどものちょっとした行動(おもちゃの取り合い、すぐに動かないなど)をきっかけに、イライラが爆発してしまうことがあります。

イライラが爆発する前に、クールダウンするための、自分なりの方法を見つけておきましょう。深呼吸をして気持ちを落ち着けたり、ゆっくり5秒数えたり、窓を開けて風に当たって気分転換するなど、少しでもストレスの解消につながりそうな工夫を見つけられると良いでしょう。

ポイント4 親自身がSOSを出そう

育児の負担を一人で抱え込まずに、家族に分担してもらったり、市の子育て支援サービス、NPOなどのさまざまな支援サービス(ファミリーサポート、訪問型養育支援サービス、一時預かりなど)の利用も考えてみましょう。SNSによる相談もあります。子育ての苦労について気軽に相談できる相談先ができると心強いですね。

ポイント5 こどもの「気持ち」と「行動」を分けて考え、こどもの育ちを応援する

こどもに「イヤだ!」と言われたとき、親自身が戸惑うこともあるでしょう。でも、2~3歳のこどもの「イヤ」は、自我の芽生えであり、成長の証しでもあります。
「どうしたらいいかな?」と、こどもの考えを引き出し、必要に応じて助け船を出しながら、こどもの言い分を気長に聴きましょう。
「わがままな子になっては困る」という想いから、親は指示的に対応してしまうこともありますが、こどもの成長過程で必ず通る道だと大らかに構えて、こどもの意思を後押ししていきましょう。

7.児童虐待の相談機関について

「気になる家庭があるけど、もし誤解だったら…」と思い、気になったまま見逃してしまうことはありませんか?通告を受けて状況を確認してみたら、「誤解だった」、「虐待ではなかった」ということもよくあります。
早期発見・早期対応がこどもの安全・安心を守る手立てです。ご協力をお願いします。

こども家庭センター、児童相談所への連絡・相談

虐待を受けていると思われる児童を発見した場合(疑わしい場合も含む)は、各こども家庭センターまたは児童相談所へ連絡・相談をお願いします。

こども家庭センターと児童相談所の連絡・相談における区別は、緊急度・性的虐待の有無等にもよりますが、迷った場合はどちらへ連絡・相談いただいても構いません。

<虐待が疑われる場合>
担当 住所 電話番号
中央こども家庭センター 中央区元城町103-2 053-457-2300
東こども家庭センター 中央区流通元町20-3 053-424-0121
西こども家庭センター 中央区雄踏一丁目31-1 053-597-1157
南こども家庭センター 中央区江之島町600-1 053-425-1564
浜名こども家庭センター 浜名区貴布祢3000 053-585-1677
北こども家庭センター 浜名区細江町気賀305 053-523-2893
天竜こども家庭センター 天竜区二俣町二俣481 053-922-0173

<緊急性がある場合・性的虐待の疑いの場合>

  • 浜松市児童相談所(静岡県浜松総合庁舎内)    053-457-2703
  • 『児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」』(通話料無料)
    児童相談所へ休日、夜間でも通告・相談ができる全国共通の電話番号です。
    「189」にかけると近くの児童相談所につながります。
    通告・相談は、匿名も可、相談内容、相談者など情報は保護されます。

親子のための相談LINE

主に浜松市内に居住するこども及びその家族等を対象に、子育て相談や児童虐待防止などに関する相談がSNS (LINE) でできます。
相談時間は、平日の10時~20時です。

浜松市児童相談所
池田健人

 

出典:浜松成育医療学講座通信 第12号(2025.6)

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