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妊娠中の栄養について 助産師たちのつぶやき
立春を迎え暦上では春を迎えましたがまだまだコートの手放せない厳しい寒さが続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
今シーズンはA型インフルエンザが各地で猛威を振るったというニュースを多く見聞きしました。インフルエンザだけでなく、コロナウイルスやマイコプラズマ肺炎など、空気の乾燥するこの季節は多くの感染症が流行しやすい季節になります。感染症対策を特にしっかり行い、体調に留意してお過ごしください。
妊娠中の体重増加の目安を知ろう
さて今回は、妊娠中の栄養についてお話したいと思います。
先日、産婦人科の医師との会話で妊婦さんの痩せ思考の増加が話題になりました。2019年の調査によると、日本人女性の“やせ”の割合は20代女性では約21%、30代女性では約16%であり、この数字は他の先進国と比較してもトップの割合であると報告されています。妊娠をすると、お腹の赤ちゃんの成長とともにボディラインの変化や体重の増加などが起こる事はごく自然なことですが、最近では妊婦さんであっても、体型の変化に神経質になりすぎるあまりに適切な体重増加を抑えようとしてしまっている、すなわち妊娠期であっても低栄養状態にある妊婦さんが増加しているといいます。
日本産婦人科学会では、令和3年に「妊娠中の体重増加の目安」というものを発表しています。これによると妊娠前のBMI(体格指数。体重kg÷身長mの2乗で求めることができます)が18.5に満たない“やせ”の人は12~15kg、BMI18.5~25.0の“ふつう”の人は10~13kgの体重増加が妊娠中の目安であるとされています。言い換えれば、全妊娠期間を通して、ふつう体型の人で最低10kg程度、やせの人ならば最低12kg程度の体重増加が必要であると考えることができます。
妊娠中の栄養と赤ちゃんの関係
妊娠中の適切な体重増加や栄養管理は低出生体重児の出生率を減少させるだけでなく、出生後の成長発達にも影響があるとされています。
中国で行われた研究では、妊娠期間を通してたんぱく質や人の発達や代謝機能を適切に維持するために必要な栄養素である、ビタミンやミネラルといった微量栄養素を多く含んだ食事摂取をした妊婦さんから出生した児は、その後の神経発達が良好であり、反対に鉄分やミネラルの少ない食事パターンが多かった妊婦さんから出生した児は、神経発達が不良であったと報告されています。
この調査結果を踏まえると、妊娠中の食事は単にエネルギー補給の目的だけでなく、赤ちゃんの身体の構成や神経系の発達のためにとても重要であることが分かります。
バランスのとれた食事を意識するには
しかし、バランスのとれた食事と言われてもどんなことに注意したらよいのか、何をどのくらい摂取したらよいのか、難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。そんな方は厚生労働省から出されている「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考にしてみてください。1日に「何を」「どれだけ」食べたらバランスの良い食事を摂取することが出来るかがイラストで分かりやすく紹介されています。
妊娠初期にはつわりが辛かったり、後期には大きくなってきたお腹で胃が圧迫されてしまうなど、妊娠中は食に関するマイナートラブルもつきものだと思います。さらに、たまにはジャンクフードがどうしても食べたくなる時や忙しくて外食やカップ麺など手軽に食べられる物を選びがちになってしまうときもあるかと思います。そんな中でも妊婦さんだけでなくご主人やパートナーとも、食を通してまだ見ぬお腹の赤ちゃんを思う時間が、あたたかく幸せな時間になることを願っています。
文/浜松医療センター周産期センター 助産師 黒柳詩歩